第1巻 三遊亭円朝集(第2回配本)
三遊亭円朝(1839−1900)
日本近代の言文一致体の文学を語るとき、円朝の語りを抜きにすることはできない。本書ではモーパッサンの「親殺し」の翻案「名人長二」や探偵小説の初期作品ともいわれる『松の操美人の生埋』などを収録する。
明治20年 4月 欧州小説/黄薔薇 原著者不詳 金泉堂
明治21年 5月 松の操美人の生埋 原著者不詳 大川錠吉
(全四十四席のうち第一席〜第十二席まで収録)
明治28年 4月 名人長二 モーパッサン著 中央新聞
【明治翻訳文学と私】
森鴎外訳「即興詩人」 ―『源氏物語』と『神曲』を結ぶもの― 剣持武彦
明治翻訳文学年表(三遊亭円朝編)
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第2巻 福地桜癡・益田克徳集(第4回配本)
福地桜痴(1841−1906)/益田克徳(1852−1903)
明治期を新聞人として渉った幕臣桜癡は維新史観を拒否して生きた人である。 彼が伝統文化に与し、西欧文化の波に洗われながら歌舞伎革新に向かったのは時代の流れであったろう。
桜癡はユゴーの「レ・ミゼラブル」翻案「あわれ浮世」ほかを、 益田は言文一致体として評価の高いリットンの翻訳『夜と朝』を収録する。
福地桜痴編
明治30年1月あわれ浮世 ユゴー著 太陽(〜4月)
益田克徳編
明治26年10月夜と朝 リットン著 博文館
『夜と朝』の文体について 川戸道昭
明治翻訳文学年表(福地桜痴編)
明治翻訳文学年表(益田克徳編)
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第3巻 井上勤集 (第2回配本)
井上勤(1850−1928)
井上勤は、明治10年代の西欧文学移入に大きな役割を果たした。 とりわけヴェルヌを精力的に紹介しつづけた。その井上が明治13年に最初に手がけた『九十七時間二十分/月世界旅行』
10冊本を一巻にまとめて収録する。
明治13年 11月 九十七時二十分間月世界旅行 ヴェルヌ著 大阪・黒瀬勉二・三木美記
序(片岡徹)
凡例
第一巻(第一回〜第三回)
(砲銃社/社長珍事報告/社長演舌後会衆人気)
第二巻(第四回〜第七回)
(「ケンブリツジ」天象台之返答/月世界之説/米国人月世界事情之不学及信用/大砲弾丸之頌詞)
第三巻(第七回之続〜第十一回)
(弾丸頌詞之続/大砲沿革之略伝/火薬之疑問/二千五百万人中一人之敵/「フロリダ」及「テキサス」)
第四巻(第十二回〜第十六回)
(資本金/石丘/鶴嘴、鋤及ヒ鏝/大砲鋳造落城ノ景況/「コルンビヤド」砲)
第五巻(第十六回之続〜第十九回)
(「コルンビヤド」之続/電信報知/汽船阿土蘭多号ノ旅客/演舌ノ大会)
第六巻(第十九回之続〜第二十回)
(演舌ノ大会之続/月球関係之討論)
第七巻(第二十回之続〜第二十一回)
(月球関係ノ討論之続/社長及「ニコール」氏ノ争鬥)
第八巻(第二十一回之続〜第二十三回)
(社長及「ニコール」氏ノ争鬥之続/米国之新府民/弾丸ヲ以テ車ニ換ユ)
第九巻(第二十四回〜第二十五回)
(巨大ノ望遠鏡/結末ノ談話)
第十巻(第二十六回〜第二十八回)
(巨砲発射/巨砲発射後万衆の景況/月世界旅行弾丸之発見)
井上勤の『月世界旅行』―本邦初の本格サイエンス・フィクション― 川戸道昭
明治翻訳文学年表(井上勤編)
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第4巻 坪内逍遥集 (第1回配本)
坪内逍遥(1859―1935)
逍遥といえばシェイクスピアであるが、10年代、20年代の訳業は目に触れることが少ない。 稀覯書として名高いスコットの『春風情話』、アディソンの作品、および初期翻訳作品の序文を集成する。
『小説神髄』と並び、『慨世士伝』の序文は近代文学の方向付けをした優れた文学論となっている。 本巻では明治期に脚光を浴びたスコット、リットン、エインズワース、アディソン、
ハウプトマンに関心を抱いてきた姿を訳業にて集成する。
明治13年4月 春風情話 スコット著 中島精一出版
明治18年2月 開巻悲憤/慨世士伝 はしがき リットン著 晩青堂発兌
明治25年10月 雷小僧 エインズワース著 都新聞
明治26年10月 扇子使用法の練習 アディソン著 早稲田文学
明治28年9月 ジョセフ、アヂソンの散文 アディソン著 国学院雑誌
明治30年1月 心の解剖 アディソン著 新小説
明治39年8月 ハウプトマンの「孤煢」 ハウプトマン著 趣味
【明治翻訳文学と私】明治二十年代翻訳文学とジャンル編成 井上健
明治期翻訳文学年表 坪内逍遥編
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第5巻 森田思軒集T (第1回配本)
森田思軒(1861−1897)
思軒の評価は、生前翻訳王と謳われながら、没後一転する。しかし、明治期の翻訳文学は思軒 を外して語れず、『思軒全集』は第一巻のみで未刊となっている現状に鑑み、初期翻訳作品を渉
猟して、「明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》」とあわせ思軒訳業の全容を提示し、思軒再評価の 機運を促すべく全二巻とする。
Tで初期翻訳の短篇を集成、明治期の翻訳史の原点を探る。長篇をUに収め、《新聞雑誌編》 と合せその全業績を浮彫りとする。
明治19年10月 印度太子舎摩の物語 原著者不詳 郵便報知新聞
明治20年3月 英国士官の物語 原著者不詳 郵便報知新聞
明治20年8月 貧富 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年1月 夢中夢 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年7月 定数 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年11月 女旅客 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年11月 右足 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年12月 密封書 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年12月 元日 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年12月 猫 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年12月 倫敦辻馬車 原著者不詳 郵便報知新聞
明治21年12月 時計獄 原著者不詳 郵便報知新聞
明治22年4月 代言人 原著者不詳 郵便報知新聞
明治22年5月 狼声 原著者不詳 郵便報知新聞
明治22年5月 一大奇術 原著者不詳 郵便報知新聞
明治22年5月 まちがひ 原著者不詳 郵便報知新聞
明治22年5月 是はソモ 原著者不詳 郵便報知新聞
明治22年6月 巴里探偵の話 原著者不詳 郵便報知新聞
明治24年1月 歳盡 スーヴェストル著[屋根裏の哲人] 都の花
明治24年4月 西文小品(旅行の説) ベーコン著 報知叢話
明治24年4月 西文小品(費の説) ベーコン著 報知叢話
明治25年12月 滑稽氏 エンゲル著 国民之友
明治25年12月 不思議の後家 エンゲル著 国民之友
明治26年1月 一シリング銀貨の履歴 アディソン著 国民之友
明治26年2月 千人会 エッヂワース著 国民之友
初期翻訳文学における思軒と二葉亭の位置 川戸道昭
【明治翻訳文学と私】森田思軒の伝記を執筆して 谷口靖彦
明治期翻訳文学年表 森田思軒編
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第6巻 森田思軒集U(第4回配本)
森田思軒(1861−1897)
思軒の評価は、生前翻訳王と謳われながら、没後一転する。しかし、明治期の翻訳文学は思軒 を外して語れず、『思軒全集』は第一巻のみで未刊となっている現状に鑑み、初期翻訳作品を渉
猟して、「明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》」とあわせ思軒訳業の全容を提示し、思軒再評価の 機運を促すべく全二巻とする。
明治20年1月金驢譚 アプレイアス著 郵便報知新聞(〜2月)
明治21年2月大氷塊 ヴェルヌ著 郵便報知新聞(〜4月)
明治22年1月探征隊 ヴェルヌ著 郵便報知新聞(〜3月)
若き日の森田思軒 川戸道昭
【明治翻訳文学と私】歴史はフィクションより面白い 加賀野井秀一
明治翻訳文学年表(森田思軒編)
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第7巻 黒岩涙香集 (第3回配本)
黒岩涙香(1862−1920)
「萬朝報」を拠点とした涙香の探偵小説は一世を風靡した。本書では、その中から傑作を選び一 巻とする。
明治23年 7月 金剛石の指環 原著者不詳 岩本五一
明治23年 7月 恐ろしき五分間 原著者不詳 岩本五一
明治23年 7月 婚姻 サッカレー著 岩本五一
明治23年 7月 紳士三人 原著者不詳 岩本五一
明治26年 4月 裁判小説/人耶鬼耶 ガボリオ著 大川屋
森田思軒と黒岩涙香 ―『レ・ミゼラブル』の翻訳をめぐって― 川戸道昭
【明治翻訳文学と私】涙香小説の報道性 堀啓子
黒岩涙香作品目録 伊藤秀雄
明治翻訳文学年表(黒岩涙香編)
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第8巻 森鴎外集T(第1回配本)
森鴎外(1862−1922)
明治期の西洋翻訳文学史上で鴎外の果たした役割は突出している。明治期に新聞雑誌に発表 された翻訳を年代順に収録し、「明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》」とあわせて翻訳初出集成を
めざす。作品としてはハウフ、レッシング、ドーデ、クライスト、シュニッツラー、ウィード、リルケ、 アルツィバーシェフ、ドストエフスキーなどの翻訳を収める。
Tは、明治18年に発表された最初の翻訳「盗侠行」から日露戰爭までの作品を収録する。 Uに収める日露戦後の翻訳と《新聞雑誌編》に収めた作品により明治期の鴎外の全容に迫る。
明治18年1月 盗侠行(訳独逸稗史) ハウフ著 東洋学芸雑誌
明治22年3月 玉を懷て罪あり ホフマン著 読売新聞
明治22年10月 洪水 ブレット・ハート著 しがらみ草紙(〜23年3月)
明治22年10月 戯曲/折薔薇 レッシング著(〜25年6月)
明治23年2月 瀛西詩話(1)[盲帝の曲] (2)[今の英吉利文学] (3)[美しき星] (4)[白壁の微瑕] (5)[再びドーデーのことを記す] 国民新聞(〜3月)
明治23年3月 地震 クライスト著 国民新聞(17日〜26日)
明治23年4月 埋れ木 シュビン著 しがらみ草紙(〜25年4月)
明治24年3月 黄綬章 ハックレンデル著 東京日日新聞(8日〜14日)
【参考】明治24年5月 黄綬章 ハックレンデル著 しがらみ草紙
明治24年5月 蟻の話 ルードヴィヒ著 海潮(〜6月)
明治24年6月 みくづ ドーデ著 しがらみ草紙
明治24年7月 戦僧 ドーデ著 しがらみ草紙
明治25年8月 女丈夫 フレンツェル著 国民之友
明治25年9月 俘 レツシング著 三木竹二校 しがらみ草紙(〜7月)
【明治翻訳文学と私】森鴎外の翻訳文学との出会ひ 小堀桂一郎
明治期翻訳文学年表 森鴎外編
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第9巻 森鴎外集U (第2回配本)
森鴎外(1862−1922)
明治期の西洋翻訳文学史上で鴎外の果たした役割は突出している。明治期に新聞雑誌に発表 された翻訳を年代順に収録し、「明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》」とあわせて翻訳初出集成を
めざす。作品としてはハウフ、レッシング、ドーデ、クライスト、シュニッツラー、ウィード、リルケ、 アルツィバーシェフ、ドストエフスキーなどの翻訳を収める。
明治35年 6月 やまひこ ヒッペル 芸文(〜11月〔万年艸〕)
明治35年 8月 分身 ハイネ 芸文
明治35年 8月 受戒 クライゲル 芸文
明治39年 10月 オェディプスとスフィンクスと ホフマンスタール 歌舞伎
明治39年 10月 ウント、ピッパ、タンツト ハウプトマン 歌舞伎
明治40年 1月 ミットメンシュ デュメル 歌舞伎
明治41年 1月 アンドレアス、タアマイエルが遺書 シュニッツレル 明星
明治41年 1月 ソクラテエスの死 クレーガー 心の花
明治41年 4月 いつか君は帰ります ルスト 明星
明治41年 5月 黄金杯 ワッセルマン 明星(〜6月)
明治41年 10月 牧師 ラーゲルレーヴ 心の花
明治41年11月 わかれ ホルツ、シュラーフ共著 明星
明治42年 1月 顔 デーメル 心の花
明治42年 4月 戯曲/ねんねえ旅籠 ウィード 心の花
明治42年 10月 戯曲/家常茶飯 リルケ 太陽
明治43年 1月 午後十一時 ウィード 太陽
明治43年 1月 釣 アルテンベルク 女子文壇
明治43年 1月 白 リルケ 趣味
明治43年 3月 歯痛 アンドレーエフ 趣味
明治43年 3月 鴉 シュミットボン 帝国文学
明治43年 5月 罪人 アルツィバーシェフ 東亜之光
明治43年 10月 戯曲/馬盗坊 ショー 歌舞伎(〜12月)
明治44年 1月 一疋の犬が二疋になる話 ベルジエエ 心の花
明治45年 1月 汽車火事 ハンス・キイセル 三田文学
明治45年 1月 駆落 リルケ 女子文壇
明治45年 1月 祭日 リルケ 心の花
明治45年 5月 鰐 ドストエフスキー 新日本(〜6月)
【明治翻訳文学と私】研究への扉―鴎外の翻訳文学・翻訳語 青田寿美
明治翻訳文学年表(森鴎外編)
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第10巻 二葉亭四迷集(第1回配本)
二葉亭四迷(1864−1909)
二葉亭の訳業は「あひびき」をもって始まり、ロシア文学の日本への移入ばかりか日本の近代文 学成立に決定的な役割を果たしたが、20年代の活動は中断し再び翻訳活動が始められたのは
30年代からであった。本書ではツルゲーネフの「うき草」「くされ縁」「わからずや」を柱として収 め、30年代の二葉亭の訳業を雑誌初出からまとめる。
明治30年5月 うき草 ツルゲーネフ著 太陽
明治31年7月 親こゝろ 原著者不詳 文芸倶楽部
明治31年11月 くされ縁 ツルゲーネフ著 文芸倶楽部
明治32年1月 酒袋 原著者不詳 文芸倶楽部
明治38年1月 わからずや ツルゲーネフ著 文芸界
【明治翻訳文学と私】オシーナの樹 籾内裕子
明治期翻訳文学年表 二葉亭四迷編
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第11巻 原抱一庵集 (第3回配本)
原抱一庵(1866−1904)
マーク・トウェインの訳「該撤慘殺事件」に対する山縣五十雄の誤訳論争によって命を縮めた抱 一庵だが、それは一つの時代に殉じた翻訳家の悲劇であった。その訳業を一つの文化を遵守し
た文学者の姿であったと評価し、ここに追悼の一巻を編集する。
明治22年 11月 術士 原著者不詳 郵便報知新聞
明治25年 3月 湖畔妖物 やよい(東京新報付録)(3日) コリンズ
明治25年 3月 湖畔妖物 東京新報(8日引・11日〜5月8日) コリンズ
明治25年 8月 明月 原著者不詳 国民之友
明治36年 6月 食人会 マーク・トウェイン著 太陽
明治36年 9月 該撒惨殺事件 マーク・トウェイン著 『泰西奇文』
明治36年 9月 紳士 マーク・トウェイン著 『泰西奇文』
明治36年 9月 造人術 ルイ・ストロング著 『泰西奇文』
明治36年 9月 助言 マーク・トウェイン著 『泰西奇文』
明治36年 9月 無政府党と一夜 ドイル著 『泰西奇文』
明治36年 9月 大頓挫 モーパッサン著 『泰西奇文』
明治36年 9月 女探偵 モーパッサン著 『泰西奇文』
明治36年 9月 再び女探偵 モーパッサン著 『泰西奇文』
明治36年 9月 稀有の裁判 ドイル著 『泰西奇文』
明治36年 9月 無音の瀑 ドイル著 『泰西奇文』
明治36年 9月 名曲「愛禽」 エッヂワース著 『泰西奇文』
明治41年 4月 庭園の快楽 ロルフ・クリソン著 新声
【明治翻訳文学と私】明治の探偵小説の思い出 伊藤秀雄
明治翻訳文学年表(原抱一庵編)
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第12巻 尾崎紅葉・小栗風葉集 (第2回配本)
尾崎紅葉(1868−1903)/小栗風葉(1875−1926)
硯友社文学は旧派の文学といわれながら、紅葉は常に西洋文学に自らの小説のアイデアを求 めて創作活動を行なった。紅葉訳はグリム、モリエール、ゾラなどの翻訳を、風葉はモーパッサ
ンの翻訳を収録し、一巻とする。
尾崎紅葉編
明治22年10月 恋山賤 ゾラ著 文庫
明治26年 三すぢの髪 グリム著 読売新聞
明治28年 彼刹羅 シェリダン著 歌舞伎新報
明治30年 12月 銃の銘 ボッカッチョ著 太陽
明治31年 1月 手引の糸 ボッカッチョ著 新小説
明治31年 1月 阿蘭陀芹 原著者未詳 太陽
明治35年 3月 をさな心 ドーデ著 新小説
明治35年 9月 女 モーパッサン著 新小説
明治37年 1月 路迷ひ チェーホフ著 文芸倶楽部
明治38年11月 霊符 フルダア著 新潮
小栗風葉編
明治34年 6月 応募兵 原著者不詳 新文芸
明治36年 5月 へそ日記 ツルゲーネフ著 新小説
明治38年 5月 堀田親子 モーパッサン著 新古文林
明治39年 8月 帰国 モーパッサン著 新潮
明治39年 10月 鬼子 モーパッサン著 太陽
明治39年 11月 血統 モーパッサン著 新潮
明治41年 2月 妹の子 ダヌンツィオ著 新潮
【明治翻訳文学と私】拡げられた作品世界 ―外国文学を下敷きに― 堀啓子
明治翻訳文学年表(尾崎紅葉編)
明治翻訳文学年表(小栗風葉編)
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第13巻 内田魯庵・嵯峨の屋お室集 (第2回配本)
内田魯庵(1868−1929)/嵯峨の屋お室(1863−1947)
『罪と罰』『復活』の訳者として名高いが、ペンの労働者といわれる魯庵は多くの翻訳を残した。 本書では「明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》」とあわせ、魯庵の明治期の訳業を俯瞰する一巻と
する。二葉亭とならびロシア語から直接ロシア文学の移入に尽力した嵯峨の屋の翻訳作品を合 集する。
内田魯庵編
明治25年 6月 如安外伝 シラー著 読売新聞(12日〜7月31日)
明治26年 4月 巨人談 ヴォルテール著 三籟(〜7月)
明治29年 7月 しきなみ 原著者不明 文芸倶楽部
明治31年 8月 革命会議 ワシーリ・ステファニク著 労働世界(18号、19号)
明治35年 6月 馬鹿ものイワン トルストイ著 学燈(〜9月)
明治38年 1月 擬宝石 モーパッサン著 太陽
明治38年 1月 有耶無耶の記 モーパッサン著 学鐙(〜3月、6月)
明治39年 4月 二人画工 シェンキエヴィッチ著 二六新報(2日〜19日)
明治39年 8月 慈善婦人 モーパッサン著 太陽
明治44年 9月 人間の要する土地幾許ぞ トルストイ著 学燈
嵯峨の屋お室編
明治23年 3月 母と小児と遇ッた時 原著者不明 国民新聞(29日)
明治23年 10月 月夜のクレームリ岡 ザゴースキン著 国民之友(未完)
明治26年 9月 寓意談 クルイローフ著 家庭雑誌
明治26年 10月 クルイロウフの寓意談 クルイローフ著 家庭雑誌
明治26年 11月 熊及びおさな子 アフデーフ著 家庭雑誌
明治26年 12月 寓意詩 ドミートリエフ著 家庭雑誌
明治26年 12月 童話 ジュコフスキー著 家庭雑誌
明治27年 4月 オブロウモフの幼時 ゴンチャローフ著 しがらみ草紙
明治33年 8月 田舎美術家 ツルゲーネフ著 太陽
明治33年 11月 救世主の画像に対して コリツォフ著 中学世界
明治34年 11月 田舎家 ツルゲーネフ著 新小説
明治35年 10月 母の愛 アクサーコフ著 女学世界
明治35年 12月 私の祖父 アクサーコフ著 太陽
明治36年 3月 妖婦伝 ツルゲーネフ著 新小説
明治36年 9月 水車小屋 ツルゲーネフ著 新小説
内田魯庵とA・ポープ ―『文学者となる法』における構想の原点― 川戸道昭
【明治翻訳文学と私】嵯峨の屋おむろ藏書一覧 籾内裕子
明治翻訳文学年表(内田魯庵編)
明治翻訳文学年表(嵯峨の屋お室編)
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第14巻 馬場孤蝶集 (第3回配本)
馬場孤蝶集(1869−1940)
明治期に翻訳家として生きた孤蝶であったこそ、『明治文壇回顧』を書き残すことができた。慶応 大学で欧州文学を講義し続けた孤蝶の翻訳は、いわゆる「大陸文学」作品に集中している。ドー
デ、ゾラ、モーパッサン、ツルゲーネフ、シェンキエヴィッチの訳は明治後半から大正期の文学情 況を体現していった仕事であった。
明治28年 6月 かたみの絵姿 原著者不明 文学界
明治29年 9月 あら磯 バルザック著 太陽
明治35年 5月 楽人のねたみ ドーデ著 文芸界
明治35年 7月 海音潮声 バイロン著 婦人界
明治35年 9月 沖の小島 ドーデ著 青年界
明治38年 10月 終の教 ドーデ著 国文学
明治39年 1月 まごゝろ モーパッサン著 国文学
明治39年 1月 金脳の人 ドーデ著 明星
明治39年 1月 六号室 チェーホフ著 芸苑
明治39年 4月 外光 ゾラ著 明星(5、6、11月、未完)
明治39年 8月 わが小説 モーパッサン著 芸苑
明治39年 9月 同情 モーパッサン著 明星
明治40年 1月 田鼠(コザック伝説) 明星
明治40年 4月 亡命者 原著者不明 慶応義塾学報(未完)
明治41年 1月 火と剣 シェンキエヴィッチ著 明星(〜6月)
明治41年 1月 断頭台 ツルゲーネフ著 新声(〜4月)
明治41年 12月 処女地(梗概)ツルゲーネフ著 趣味(〜42年1月)
明治42年 4月 初雪 モーパッサン著 慶応義塾学報
明治42年 7月 モニカ(梗概) ブールジェ著 女子文壇
明治43年 5月 ブウル・ド・スイフ モーパッサン著 三田文学(〜8月)
円朝の生きた時代、孤蝶の生きた時代 ―モーパッサン著「親殺し」の訳を軸にして― 榊原貴
明治翻訳文学年表(馬場孤蝶編)
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第15巻 松居松葉集 (第3回配本)
松居松葉(1870−1933)
松葉は劇作家として著名であるが、翻訳家としても多くの訳業を残している。ゾラ、ホーソーン、 モリエール、シェイクスピアなどを訳しているが、とりわけ、『鈍機翁冒険譚』はセルバンテスの『ド
ン・キホーテ』の最初の翻訳書として高く評価されている。本書では、これとバーナード・ショーの 「二十世紀」を併載し、一巻とする。
明治26年 10月 *鈍機翁冒険譚(世界文庫第九・十編)セルバンテス著 博文館(〜11月)
明治44年 9月 二十世紀 ショー著 早稲田文学
【明治翻訳文学と私】〈戦後〉の始まった頃 ―圏外から見た学会胎動期― 稲村徹元
明治翻訳文学年表(松居松葉編)
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第16巻 田山花袋・国木田独歩集 (第4回配本)
田山花袋(1871−1930)/国木田独歩(1871−1908)
花袋のモーパッサンとの出合いはあまりにも有名であるが、本書では花袋の多岐にわたる西洋 文学紹介の訳業を紹介し、また独歩はツルゲーネフの「決闘家」、ゴーリキーの「人生」などを収
録し、自然主義文学と人生を考察する一巻とする。
田山花袋編
明治23年6月 夕立 ミッチェル著 穎才新誌(〜7月)
明治28年2月 跛娘 ドーデ著 文芸倶楽部
明治28年5月 古井水 原著者不詳 家庭雑誌(〜8月)
明治30年6月 雛っ児 アンデルセン訳 少年世界
明治33年10月 入寇 ドーデ著 太陽(〜12月)
明治35年2月 灯台守 シェンキェヴィッチ著 太陽
明治35年7月 最後の一滴 ブールジェ著 太陽
明治36年2月 思ひ出(風/雨) ヴェルレーヌ著 太陽
明治36年10月 島の墳墓 ドーデ著 太陽
明治38年7月 海上二里 ハイゼ著 新古文林
明治39年3月 魔国 〔アラビアン・ナイト〕 新小説
国木田独歩編
明治35年9月 宝 原著者不詳 女学世界
明治37年4月 決闘家 ツルゲーネフ著 文芸倶楽部
明治39年5月 人生 ゴーリキー著 近時画報
媒介者としての独歩 丁貴連
明治翻訳文学年表(田山花袋編)
明治翻訳文学年表(国木田独歩編)
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第17巻 上田敏集 (第4回配本)
上田敏(1874−1916)
フランス象徴詩の紹介者としての敏の役割は高い。その訳業は『海潮音』にまとめられ名高い が、本書ではその初出を雑誌から収載し、かつ敏の訳業全般を俯瞰する一巻としてまとめる。
明治33年8月 まぼろし(ろちを和げたる) ロチ著 帝国文学
明治34年1月 四季賦 マアエ゛ル著 帝国文学
明治34年12 月黒瞳 アラルコン著 明星
明治35年1月 夜のけはひ 原著者不詳 帝国文学
明治35年6月 鷹の歌 ゴーリキー著 芸文
明治35年12月 小曲、恋の王座 ロセッティー著 万年艸著
明治35年12月 春の潮 ブラウニング著 万年艸著
明治36年1月 女の眼に映するこよなきもの ド・クインゼ著 心の花
明治37年10月 新生 ダンテ著 中央公論
明治38年6月 愛の教/花冠/銘文 レニエ著 明星
明治38年6月 黄昏 ローデンバック著 明星
明治38年6月 水かひば ヴェルハーレン著 明星
明治38年6月 法の夕 ヴェルハーレン著 明星
明治38年6月 落葉 ヴェルハーレン著 明星
明治38年7月 よく見る夢 ヴェルレーヌ著 明星
明治38年7月 床 エレディア著 明星
明治38年7月 信天翁、人と海 ボードレール著 明星
明治38年7月 大飢餓 リイル著 明星
明治38年9月 畏怖、火宅 ヴェルハーレン著 明星
明治38年9月 海のあなたの オオバネル著 明星
明治38年9月 珊瑚礁 エレディア著 明星
明治38年9月 破鐘 ボードレール著 明星
明治38年9月 白楊 オオバネル著 明星
明治38年9月 賦 モレアス著 明星
明治38年9月 嗟歎 マラルメ著 明星
明治38年10月 時鐘 ヴェルハーレン著 明星
明治38年12月 心情 イェイツ著 明星
明治39年1月 おもかげ ノヴァーリス著 明星
明治39年1月 旅行 アンドレーエフ著 芸苑
明治39年4月 春夜(詩神/詩人) ミュッセ著 明星
明治40年1月 歌よ、ねがふは ダンテ著 芸苑
明治40年3月 よそ人のあざむが如く ダンテ著 芸苑
明治40年5月 これはもと アンドレーエフ著 趣味
明治40年11月 温室/心 メーテルリンク著 哲学雑誌
明治42年1月 クサカ アンドレーエフ著 新小説
明治42年5月 恐怖(沈黙、里子) アンドレーエフ著 中央公論
明治42年5月 虱とるひと ランボー著 女子文壇
明治43年6月 俊傑 ヴェルハーレン著 芸文
明治44年1月 別離 フォール著 芸文
明治44年5月 両替橋/夏の夜 フォルネル著 芸文
明治45年1月 印象詩 ラフォルグ著 三田文学
上田敏とアンドレーエフ 塚原孝
アンドレーエフ翻訳作品目録 塚原孝
明治翻訳文学年表(上田敏編)
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第18巻 森皚峰・佐藤紅録集 (第4回配本)
森皚峰/佐藤紅緑(1874−1949)
ドイルの「緋色の研究」の翻訳「モルモン奇譚」は、日本の探偵小説史上論議の的となっている 作品である。本書はこの一編を初出紙から採録する。家庭小説の代表的作家といわれる紅緑
が、作家研究で見落とされている青年期に訳出したメーテルリンク、ユゴー、モーパッサン等の 作品を探索してここに収める。
森皚峰編
明治34年11月 モルモン奇譚 ドイル著 時事新報(〜35年1月)
佐藤紅緑編
明治38年1月 モンナ・ワ゛ンナ メーテルリンク著 新潮
明治38年2月 深森 ユゴー著 新潮
明治39年9月 墓標 モーパッサン著 新潮
明治42年4月 犠牲 ユゴー著 文芸倶楽部
明治42年11月 何も言へぬ ショー著 演芸画報
『緋色の研究』翻訳書誌 榊原貴教
森皚峰略歴
明治翻訳文学年表(森皚峰編)
明治翻訳文学年表(佐藤紅緑編)
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第19巻 草野柴二・押川春浪集(第1回配本)
草野柴二(1875−?)/押川春浪(1876−1914)
草野柴二はモリエールの翻訳家として有名だが、「明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》」との重複 をさけ、アンドレーエフ、ツルゲーネフ、トルストイ、イプセンの翻訳を収めて、草野の訳業を俯瞰
できる巻とする。
春浪編では、彼が生涯関心を抱き続けたスティーブンソンの翻訳と新発掘のラム編の「シムベリ ン」訳を収録する。
草野柴二編
明治37年6月 喜劇/艶舌魔 モリエール著 明星
【参考】明治41年3月 モリエール全集序 金尾文淵堂
明治41年1月 人間伝 アンドレーエフ著 明星
明治41年3月 猶太人 ツルゲーネフ著 帝国文学
明治42年3月 アンナ・カレンナ トルストイ著 新声
明治43年4月 絞首台まで アンドレーエフ著 開拓者
押川春浪編
明治36年7月 新アラビヤンナイト スティーブンソン 大学館
明治36年11月 王女の旅 シェイクスピア(ラム) 婦人界
押川春浪と『新アラビヤンナイト』 川戸道昭
【明治期翻訳文学と私】日本近代文学は翻訳に始まる 横田順彌
明治期翻訳文学年表 草野柴二編
明治期翻訳文学年表 押川春浪編
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第20巻 小山内薫集 (第3回配本)
小山内薫(1881−1928)
森鴎外に翻訳家として認められ、その後自由劇場、築地小劇場で翻訳劇による近代劇導入に果 たした役割は大きい。「万年艸」時代の翻訳から、ゴーリキーの「夜の宿」、チェーホフ「犬」、メー
テルリンク「タンタヂイルの死」に至る明治期の訳業を俯瞰する一巻として編集する。
明治35年 10月 墓 モーパッサン著 万年艸
明治35年 11月 「セオキオ夜泊」の一節 シェリー著 万年艸
明治35年 11月 むなしき月日 ロセッティー著 万年艸
明治35年 12月 恋の葬 テニソン著 万年艸
明治38年 9月 彼得の母 ラーゲルレーヴ著 帝国文学
明治39年 3月 呪詛 ラーゲルレーヴ著 帝国文学
明治40年 1月 羮 ニコライ・ウスペンスキイ著 家庭文芸
明治40年 8月 牧歌 ハウプトマン著 太陽
明治41年 1月 使徒 ハウプトマン著 太陽
明治41年 1月 墓畔 ラアゲルレエフ著 帝国文学
明治42年 1月 貧民院 ハイド、グレゴリー合作 早稲田文学
明治42年 1月 砂時計 イェイツ著 歌舞伎
明治43年 7月 犬 チェーホフ著 新小説
明治43年 11月 夜の宿 ゴーリキー著 三田文学
明治45年 4月 タンタヂイルの死 メーテルリンク著 三田文学
【明治翻訳文学と私】内田魯庵とハズリットの謎 泉谷 寛
明治翻訳文学年表(小山内薫編)
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