シリーズ福祉に生きる67 原崎秀司
シリーズ福祉に生きる(企画編集:津曲裕次・一番ヶ瀬康子)
発行年月:2014年10月(大空社刊)
価格:2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN:978-4-283-01441-1
体裁:B6判・166頁・並製・カバー装
(はらさき・ひでし 1903・明治36~1966・昭和41年) 日本最初の組織的ホームヘルプ事業である「家庭養護婦派遣事業」(現在の訪問介護派遣事業)を創設。原崎が導入したホームヘルプ制度は、現代日本社会の根底を支える在宅福祉・地域福祉をもたらし、さらに将来へとつながっている。
父子家庭の苦しさや一人親家庭の大変さを実感していた原崎だからこそ、家庭内でのハウスキーパーの必要性を痛感し、日常生活の向上を志向し得た。この実生活上の経験が、ホームヘルプ事業着想の有力な背景要因の一つになっていた。
原崎秀司 長野県埴科郡戸倉町(現・千曲市)生まれ。山本鼎に農民美術を学び、短歌を嗜み、法政大学哲学科で三木清に師事した。卒業後厚生省入省、全日本方面委員連盟書記として雑誌編集や映画製作に従事。長野県に転出後、県社会事業主事、人事委員会事務局長、日本赤十字社長野県支部事務局長、県社会福祉協議会理事などを歴任。県厚生課長時代、欧米社会保障視察研修中に感銘を受けたイギリスのホームヘルプ制度を取り入れ、上田市で始めた全国初の家庭養護婦派遣事業が、ホームヘルパー制度誕生の契機となった。福祉新聞社主催「日本の社会福祉を進めた100人」の一人にも選出された。
(目次より)
第一章 自由教育の影響を受けた青少年時代
生まれと青少年時代
山本鼎から教わった農民美術
短歌集団「潮音」「白夜」への入会と創作活動への覚醒
第二章 師 三木清との出会いと哲学的思考
三木による信濃自由大学講座「経済学に於ける哲学的基礎」
原崎が摂取した三木哲学の一端
第三章 戦争と全日本方面委員連盟書記時代
方面事業普及・推進のための雑誌メディアの活用――『方面時報』の編輯
『方面時報』誌上における原崎の危惧
「全国方面動静」欄及び原崎の実践
東京陸軍病院への見舞いと林少佐の所作
原崎による「編輯後記」欄の活用とその限界
映像メディアによる方面事業の推進――方面映画『方面動員』の製作と上映
『方面動員』の上映とその反響
地方勤務時代の思考と展望
方面事業との関わりからみた原崎の役割
第四章 地方への栄転と国内状況視察
栄転と軍事援護
敗戦体験を通した心境と思考の変化
渉外課長就任と妻の病臥
妻の死に直面した原崎の苦悩
甲府出張と『カントの日常生活』
長野県社会部厚生課長就任とハウスキーパーへの着想
第五章 欧米社会福祉視察研修(1953年9月19日~1954年5月1日)
スイス視察の目的と成果――国民性と地域性
イギリス視察の目的と成果――新しい講義方法との出会い
ホームヘルプ制度への着想
福祉国家形成に向けての原崎の提言
視察研修後の原崎における思想的展開
第六章 日本赤十字社長野支部活動にかけた晩年
日本赤十字社長野支部事務局長時代
体調不良と創作への執念
参考資料――欧米社会福祉視察研修帰国後に原崎が詠じた短歌一覧
参考文献
年譜及び周辺の出来事年表
【著者紹介】
(なかしま・ひろし)上智大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程単位修得満期退学。博士(医療福祉学)。帝京平成大学現代ライフ学部専任講師。日本獣医生命科学大学・昭和女子大学非常勤講師を兼務(刊行当時。2018年度より中京大学現代社会学部准教授)。単著に『日本における在宅介護福祉職形成史研究』2013年、『ホームヘルプ事業草創期を支えた人びと:思想・実践・哲学・生涯』2014年など。
【編者紹介】
(つまがり・ゆうじ)長崎純心大学大学院教授、高知女子大学名誉教授、筑波大学名誉教授。専攻は知的障害者施設史。
(いちばんがせ・やすこ)日本女子大学名誉教授。専攻は高齢者・児童・障害者福祉等、社会福祉全般。
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