シリーズ福祉に生きる64 小林運平/近藤兼市
シリーズ福祉に生きる(企画編集:津曲裕次・一番ヶ瀬康子)
発行年月:2014年10月(大空社刊)
価格:2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN:978-4-283-00598-3
体裁:B6判・256頁・並製・カバー装
(こばやし・うんぺい 1865・慶応元~1916・大正5年)(こんどう・けんいち 1896・明治29~1947・昭和22) 歴史のひだの中に埋もれてはならない!北海道特殊教育・盲聾唖教育の嚆矢、学校運営に奔走し続けた先覚者二人の生涯。この子らとて教育可能である!義務教育から見放されている、これらの子どもたちを見捨てるわけにはいかない!伝えたい内容が山ほどあるのに、それを相手に伝えられずに、苦しんでいる様子を思いながら…。
明治・大正時代に師範学校を卒業した二人の小学校訓導が、障害児と出会ってから、盲啞学校づくりと、卒業生の自立的生活を追求した。
小林運平 羽後国大館(現・秋田県大館市)に生まれる。秋田師範学校(現・秋田大学教育文化学部)卒業後、秋田県・北海道で小学校教員として勤務しながら、下宿に盲唖私塾を開設。私財を投じて寄宿舎機能をもつ小樽盲唖学校を開校し校長となる。運営資金を市民に求めた賛助員制度を立ち上げ、東京の先進校で最新の指導方法を学び、盲聾唖児実態調査を実施するなど盲唖教育の普及に取り組んだ。
近藤兼市 北海道札幌に生まれる。北海道札幌師範学校(現・北海道教育大学札幌校)卒業後、小学校教員の傍ら、吃音矯正講習会・北海吃音矯正学院を開き聾唖児を指導。札幌盲唖学校(後の札幌盲学校・札幌聾話学校)を開校、大日本盲唖実業社を設立し盲唖者の職業訓練も行う。現・北海道清水町で聾唖職業研究所・北海道聾唖農志塾を開設、聾唖者の自立の道を追求した。
(目次より)
【小林運平】
第一章 秋田から北海道へ
1大館尋常小学校で職場結婚
2秋田を離れるまで
3大館から北海道への旅
4北海道で最初の任地・市来知
5短期間異動のくりかえし
第二章 小樽区立量徳尋常高等小学校の時代
1三人の聾唖児が入学を希望
2下宿先の八畳間で指導開始
3伊澤修二談「吃音の矯正」の記事
4楽石社と東京盲唖学校を訪ねる
5渾身の盲唖私塾々則
第三章 私財を投じた小樽盲唖学校
1待望の開校・住ノ江校舎
2学校運営資金と財団法人化
3財団法人小樽盲唖学校学則の内容
4小林運平の指導の様子
5全国に紹介された指導法
第四章 奥澤校舎の建築
1小学校訓導を辞し盲唖学校に専念
2新校舎新築資金の捻出
3奥澤校舎の完成
第五章 充実期のあしあと
1初の盲児・聾唖児の実態調査
2技芸科の指導と就職
3皇太子殿下行啓の御代覧箇所に指定
4恩師小西信八の来校
5秋田県立盲唖学校と小林運平
第六章 素顔の小林運平
1夫として、父として
2健康をむしばんだ過労
3小林運平の急逝
第七章 明治期の初等教育事情
1「学制」以降の学校制度と盲唖児
2就学率向上と就学猶予・免除
3就学率のたかまりと私立盲唖学校
【近藤兼市】
第一章 私立札幌盲唖学校開校までの足どり
1豊水尋常高等小学校に赴任したころの札幌
2吃音児と聾唖児の出会い
3札幌における盲唖教育のいきさつ
4盲人がつくった盲児教育施設
5近藤がつくった北海吃音矯正学院
6同志深宮友仁との出会い
7私立札幌盲唖学校の誕生
第二章 私立札幌盲唖学校の明と暗
1第一回卒業式
2師範学校の古材木を使った新築校舎
3札幌市民に新校舎公開
4大日本聾唖実業社と職業教育
5唐突な財産差し押さえ事件
6慢性的な学校運営資金の不足
第三章 生徒増の活気とさまざまな難儀
1札幌盲学校と札幌聾話学校に分離
2ヘレン・ケラー女史講演会での変事
3盲学校・聾唖学校設置義務と道庁の対応
4大日本聾唖実業社の閉鎖
第四章 卒業生の自活をめざして
1塘路湖湖畔での試みがとん挫
2御影村で北海道聾唖農志塾建設
第五章 御影村へ集団移転
1御影移住をよそに庁立盲学校が開校
2札幌から御影までの片道切符
3御影村でつづいた窮乏生活
4近藤兼市の心境
5長男・長女・次男を聾話学校の指導者に
第六章 近藤兼市の逝去とその後
1台風で全壊した施設
2大雪のあとの学校葬
3盲学校の閉鎖と聾話学校の道立移管・廃校
引用・参考文献
年譜
【著者紹介】
(さとう・ただみち)宮城県生まれ。東北大学卒後、北海道稚内聾学校、小樽聾学校、筑波大学附属聾学校、札幌聾学校に勤務。北海道立特殊教育センター開所以降6年間、教育相談・研究研修・広報事業に従事。札幌聾学校教頭、小樽聾学校長、中標津高等養護学校長、特殊教育センター所長、札幌聾学校長、道都大学社会福祉学部教授を歴任。現在、北星学園大学・札幌大学非常勤講師、「聴覚障害教育論」「聴覚障害者の心理・生理・病理」担当(刊行当時)。
【編者紹介】
(つまがり・ゆうじ)長崎純心大学大学院教授、高知女子大学名誉教授、筑波大学名誉教授。専攻は知的障害者施設史。
(いちばんがせ・やすこ)日本女子大学名誉教授。専攻は高齢者・児童・障害者福祉等、社会福祉全般。
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