近世・古典
江戸時代庶民文庫 80巻 〈算法入〉勧農固本録ほか
発行年月:2019年10月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【地方(じかた)・経済】
○〈算法入〉勧農固本録(万尾時春/享保10年)
農村行政に携わる者が農民生活や農耕の実情を把握して、適切な農村統治を行うための知識・心得を詳述した書。役人は朝早く出勤して遅く退くべき…公正かつ公平無私であるべき…百姓からの進物等を一切拒否すべき等と諭す。
○算法地方指南(村田恒光/天保7年)
地方役人や村役人向けに書かれた農村支配の手引書「地方書」のうち、特に、検地・年貢・普請等に関する諸計算に比重を置いた算法地方書の一つ。
○地方調法記(烏有逸人/明治3年)
著者の実務経験に基づき農村経営上の基本事項をまとめた書。優良な農地の条件や、土地の善悪を見極める重要性、地方役人の心構えや百姓に対する指導や理解、実務上の秘訣や心得ほか。
江戸時代庶民文庫 79巻 秉燭或問珍ほか
発行年月:2019年10月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【気象】
○秉(へい)燭或問珍(鷹見爽鳩/宝永7年)
天地間の自然現象、また、不可視的現象・怪異現象から呪術・迷信に至る諸現象の原因等について問答体で記述した書。雷・風・月・虹・光物・谷音・地震・潮・竜宮・狐火・高山煙立つ・鬼門・鬼神・轆轤首・夢・仙人・狐・天狗・瘧・釜鳴・産婦鬼など
○〈渾天〉民用晴雨便覧(中西敬房/明和4年)
地盤(地勢)の十分な把握や、雲色・運気の定時(八節・朔日・四仲等)観測を基本に、占験(天気占い)も参酌する「観天望気ノ法」に基づいて記した、日本最初の気象関連書。
○〈天文早考〉通機図解(明逸/明和3年)
雲気(異様な雲や雲状の気)図20種40図(変体図付き)を掲げて、雲気の形状とその後の気象予測について述べた書。
○風雨賦国字辯(中西敬房編・画/安永6年)
中国(明)王鳴鶴編『風雨賦』の邦訳書。本文に仮名書きの詳しい注釈を加え、その図解55図を新たに増補した。
○〈御免〉五穀人豊紀(嶋津大定/嘉永4・5年)
嘉永5・6年の月別天候予測。一年全体の天候について、当年の納音から農作物の生育予測にも言及。各月の風雨など天候予測と農耕に関する諸注意、天変地異の可能性、暦注や選日に伴う禁忌等を記す。
江戸時代庶民文庫 78巻 古暦便覧ほか
発行年月:2019年10月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【暦】
○古暦便覧(吉田光由/万治2年)
『塵劫記』の作者が編纂した天正4年から延宝元年までの暦。
○〈万民家宝〉増補暦之抄大成(佐藤和泉/享保元年)
陰陽道を始め日本の信仰・習俗の中で生まれた暦日の神々や暦日・方位の吉凶など暦に関する用語を網羅的に集めて解説した書。
○真暦考(本居宣長/寛政11年)
上古の暦と近世の暦の相違などを考察し、中国暦法の採用による種々の支障を指摘、日本の自然・風土に調和した日本古来の「真暦」に立ち戻るべきことを述べる。
○和漢暦原考(石井磯岳/文政13年)
「和漢暦原及ビ干支ノ来由ヲ諸子ノ説ニ較ベテ」まとめた草稿を、包山の校訂を経て上梓したもので、主に日本の暦の起源や歴史、また、干支の意味について論じる。
○暦日註釈絵抄(山田野亭作・川部天受画/弘化4年)
『大雑書』等に見える暦占関係の記事を集めて種々の図解を施したもの。
江戸時代庶民文庫 77巻 温泉遊草ほか
発行年月:2019年10月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【紀行】
○温泉遊草(深草元政作、片山松庵編・序/寛文8年)
作者が二度にわたる有馬温泉での湯治旅行の模様を記した漢文の紀行文と、旅中の折々に詠じた詩歌を収めたもの。
○相馬日記(小山田与清作・鍬形蕙斎画/文政元年)
文化14年、江戸から下総国相馬郡の平将門城跡等を巡った11日間の旅行記。江戸~下総国水海道村~下野国日光領~下総国相馬郡筒戸村~成田山新勝寺~印旛郡伊篠村~江戸。各地の古跡に因む故事や地名の由来、名所和歌等を紹介。風景図「三宝寺・豊島氏城跡周辺」「下総国水海道」「羽生村・法蔵寺・累ヶ淵」「相馬偽都旧跡」「成田山不動尊」「真間国府台」も掲載。
○鹿島日記(小山田与清作・真斎英笑画/文政5年)
文政3年、江戸から千住、松戸、小金、柏、我孫子、取手、神崎、佐原、香取神社、潮来、鹿島神社、延方、息栖神社、銚子、八日市場、成田、酒々井、佐倉、船橋、行徳を経て江戸へ戻る旅行記。
○やをかの日記(岩雲花香作・序、精々翁培山画/天保2年)
富士登山の8日間の旅行記兼歌集。伊豆国田方郡多田村(現・伊豆の国市韮山)から荒木神社、長崎村、三嶋神社、深良村、富士浅間の宮、箱根の水海、岩室を経て登頂、裾野、三島を経て多田村に帰着。
江戸時代庶民文庫 76巻 〈雛形〉匠家秘伝ほか
発行年月:2019年10月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【建築】
○〈雛形〉匠家秘伝(広丹晨父作/享保12年)
江戸中期の木割書の一つで、日本建築における規矩準縄を示したもの。
○〈大工雛形〉秘伝書図解(文照軒一志作・序、西村権右衛門画/享保12年)
江戸中期を代表する規矩術書。隅矩術(軒規矩術)に関する本邦最初の出版物とされる。
○〈俗説正誤〉匠家必用記(立石定準/宝暦6年)
番匠の祖神に関する諸説を検討し、その神徳や祀り方を説き明かし、宮造りから鳥居に至るまでの故実や、屋造りの吉凶等を述べた書。
江戸時代庶民文庫 75巻 絵本池の蛙ほか
発行年月:2019年4月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【絵本】
○絵本池の蛙(東鶴作・西川祐信画/延享2年)
『枕草子』の「ものづくし」に準じ、各巻の歌題として詠んだ狂歌と挿絵で構成した絵本。
○神事行灯(大石真虎・歌川国芳・渓斎英泉・歌川国直画/文政12~弘化4年)
川柳・狂句・地口に色刷挿絵を添えた絵本ならびに絵手本。
江戸時代庶民文庫 74巻 除蝗録ほか
発行年月:2019年4月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【農業】
○除蝗録(大蔵永常作・長谷川雪旦画/文政9年)
農薬による害虫駆除法を説いた最初の文献で、駆除に効果的な鯨油の使用方法などを論じた農書。
○農業要集(宮負定雄作・平田篤胤序/文政9年)
元禄10年刊『農業全書』に漏れた事柄や同書と異なる作者の知見をまとめた農書。
○穂立手引草(酔吟子編・篠原遷外画/文政11年)
五穀や農事関連の故事、また穀類の栽培、特に選種について記した農書。
○農業蒙訓(伊藤正作/天保11年)
若狭国河原市村(現・福井県美浜町)の庄屋が先行農書の数々を参酌しながら北陸に適した知見をまとめた農書。
○農家心得種(手塚敬義/天保14年)
身近な植物・食物に関する保健衛生上の知識や心得を一冊にまとめた、簡易な農民必携・生活百科。
江戸時代庶民文庫 73巻 八宗伝来集ほか
発行年月:2019年4月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【仏教】
○八宗伝来集(作者不明/正保4年)
南都六宗と平安二宗が日本に伝播した経緯や諸宗の概要を問答形式で記すほか、鎌倉仏教の成立・展開・本山等も述べる。
○仏道問答(智韶/文政11年)
問答形式で仏道や修行のあらまし全12問について説いた書。仏道修行の根本は信心であると諭す。
○仏道手引草(大賢鳳樹/文政3年)
和漢の諸書を参酌しつつ仏教の歴史や仏教史上の人物故事、また仏教の根本教義を平易に説いたもの。
○不思議問答(翫山・東南画/天保13年)
問答や問答歌の形式で綴った絵入りの通俗教訓書。仏説由来の言説に止まらず、教訓的な戯文も多く含む。
江戸時代庶民文庫 72巻 本朝俗談正誤ほか
発行年月:2019年4月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【故事・俗説】
○本朝俗談正誤(作者不明/元禄4年)
俚諺・伝承等、諸説の正誤を改め荒唐無稽な俗説を否定し、多く出典等を明記するなど考証的態度で記述した書。
○和漢故事談(挙扇堂静栄/寛延1年)
和漢の諸書から種々の故事・奇談・善事等を集めて解説し、出典を示した書。宝永元年刊『和語連珠集』の求板改題本。
江戸時代庶民文庫 71巻 〈新ぱんおどけ〉商売往来ほか
発行年月:2019年4月
【ジャンル】書名(主な作者/刊行年など)
【戯文】
○〈新ぱんおどけ〉商売往来(立田土瓶/江戸後期)
元禄7年(1694)刊『商売往来』に倣った戯文で、遊女の心得や通用の語句を書き記した準往来物。
○厄払ひ商売往来(立田土瓶/江戸後期)
鼈甲屋・筆屋・豆腐屋・紺屋・張形屋・人形屋を題材に、除災招福の趣きを七五調で綴った6項の戯文。
○〈おどけていきん〉道楽往来(華山亭呼升/江戸後期)
『商売往来』に倣って、道楽者の生涯を書き記し、戒めとした戯文。
○〈大坂色里名寄づくし〉京名所かへ文章(十扁舎一九カ/江戸後期)
京都の由来や京周辺の名所旧跡を紹介する『京名所(洛陽往来・都往来・都巡とも)』の文章に似せて新町遊郭を始めとする大坂の遊廓と遊里風俗を記した戯文。
○滑稽道外案文(鼻山人作・渓斎英泉画/文化頃)
享和4年(1804)刊『附会案文』を模倣・引用し、奇抜な題材で綴った戯文、滑稽本。士農工商別に詠んだ狂歌も掲げる。
○虫三ヶ仲間洗濯所え願出(桂文治カ/天保頃カ)
擬人化した蚊・蚤・虱の三者に対する洗濯所の申し渡しと、それに対する三者の口上書の二通から成る戯文。
○いたづらもの製薬種(作者不明/江戸後期)
石見銀山製薬所から鼠共仲間宛に毒殺を言い渡す文書と、それに対する鼠仲間惣代から毒殺中止の訴状の二通から成る戯文。
○乍恐奉願ひ上候魚仲間より返答書ほか(立田土瓶作・長秀画/江戸後期)
海魚・川魚仲間より板元台所御役所宛文書と、青物仲間より台所板元役所宛文書から成る、魚仲間と青物仲間の対立を題材にした戯文。
○〈青物づくし・くちあい〉奉公人請状之事ほか(梅翁/江戸後期)
文面に青物類を盛り込んだ奉公人請状風の戯文と、魚類の名称を織り込んで綴った宗旨手形風の戯文の、2通から成る。
○〈百人一首〉地口絵手本(梅亭樵父/江戸後期)
『小倉百人一首』の下の句のみを掲げ、それをもじった地口と挿絵を掲げたもの。
○道戯百人一首(山東京伝/享和4年)
歌舞伎の道化方が笑いを誘うような滑稽味を主とする狂歌を集めた異種百人一首。巻頭に狂歌8首と挿絵を掲げる。
○どうけ百人一首(作者不明/文化5年)
上掲書同様、滑稽主体の狂歌集・異種百人一首。江戸前期から伝わる『道外百人一首』の改編本。異本も収録。
○道外三十六歌仙・新撰なぞづくし(作者不明/天保頃)
6種の三十六歌仙等から任意に選んだ和歌36首をもじった狂歌集。頭書に76題の謎かけ集を掲げる。
○笑艸三十六歌仙(作者不明/江戸後期)
『小倉百人一首』等和歌をもじった、狂歌を半丁六首ずつ合計36首収録した青色刷の小冊子。
○馬鹿三人酒づくしきやうくん(作者不明/江戸後期)
『小倉百人一首』等和歌を題材に、三十六歌仙に見立ててもじった、いずれも飲酒に因んだ滑稽な狂歌ばかり36首を集めたもの。
○〈通客必用〉算法珍書(洒落斎唐人(柳川春三)・福地桜痴序/明治2年)
和算書『算法新書』のもじりだが、単なる戯文に止まらず、文明開化期の社会における皮肉や諷刺が随所に込められている。