『吾輩は猫である』 パロディ夏目漱石の処女作『吾輩は猫である』は、明治38年1月から39年8月まで「ホトトギス」に連載され、 上巻が38年10月、中巻が39年11月、下巻が40年5月に単行本として出版された。 雑誌発表の時から評判をとった小説だが、今日に至るまで読まれ続けている傑作である。 作品もよく読まれたが、そのパロディも近代文学としては例を見ないほど生んだ小説でもある。 以下に紹介するのは、『夏目漱石の研究と書誌』に発表したパロディの一覧表である。 同書には、詳細な書誌、目次、書出し等を付してあるが、量的に膨大となるので、 タイトル、著者、刊年月、出版社のみ掲げる。 紹介したのは100点余りだが、さらに調査をすれば倍近いパロディが発表されていると思う。 今後も調査を続けるつもりでいるが、こうした書物の調査は時間と根気を要する仕事で、 一人で行なうのは限界がある。このページを見ていただいた方にも追加調査の協力を呼びかけたい。 ご教示いただいた方のお名前を付して、増補版を掲載していく予定ですので、ご協力をお願いします。 連絡は、ナダ出版センターのメール nada@mbf.nifty.com まで。ご教示ください。(榊原貴教) 〜〜『吾輩は猫である』パロディ一覧〜〜 明治40年(1907) 我輩も猫である 小室白也著(明治40年1月〜41年6月)中央公論 滑稽写生 吾輩ハ鼠デアル 影法師著(明治40年9月)大学館 吾輩もモデルである 荒尾譲助著(明治40年10月15日号)新潮 明治41年(1908) 滑稽小説 我輩ハ小僧デアル 五峰仙史著(明治41年3月)大学館 我輩は蠶である 中谷桑実著(明治41年5月)求光閣書店 吾輩ハ小猫デアル 花の山芳霧著(明治41年7月)敬文社 明治42年(1909) 衛生小説 ゴノコツケン(淋菌の告白) 松山正中著(明治42年9月)有楽社 明治43年(1910) 吾輩はフロックコートである 織戸正満訳述(明治43年5月)秀美堂・金文館 明治44年(1911) 滑稽小説 我輩ハ千里眼 八千代・弦月共著(明治44年5月)田中書店 小説 我輩は猫被りである 山田孤帆著(明治44年11月)武田博盛堂 大正2年(1913) 吾輩の見たる亜米利加―猫の渡米記 保坂帰一著(大正2年1月)日米出版協会 吾輩が見たる男と女 富士川淡水著(大正2年6月)盛文社 吾輩は馬である A・シュウェル著 竹中武吉訳(大正2年9月)盛岡 山口活版印刷所 大正3年(1914) 我輩は孔子である―孔子の東京見物 贄田江東著(大正3年5月)明誠社 大正4年(1915) 狂犬 厨川辰夫著(大正4年☆月)*(横田順彌による) 大正5年(1916) 社会小説 吾輩の初旅(通俗国民文庫) 大庭片々子著(大正5年4月)山口屋書店 我輩は猿である 松浦政泰訳注(大正5年9月)集文館 大正6年(1917) 吾輩はフィルムである 活動写真雑誌編輯局著(大正6年4月)活動写真雑誌社 大正7年(1918) 吾輩は馬である 岩田烏山・青木緑園著(大正7年☆月)*(横田順彌による) 我輩は居候である 三太郎著(大正7年☆月)*(横田順彌による) 大正8年(1919) ねこのたはごと 高松多見雄著(大正8年1月)日吉堂本店 吾輩は結核黴菌である 角田隆著(大正8年2月)博文館 社会主義者になつた漱石の猫 遠藤無水著(大正8年9月)遠藤友四郎(文泉堂発売) 人間見物 トンチキ・バー 今井藻水著(大正8年11月)磯部甲陽堂 大正9年(1920) それからの漱石の猫 三四郎著(大正9年2月)日本書院 漱石の猫は我輩である 蓑村雨男著(大正9年3月)文撰会 精華堂書店発売 私は豚 北村東紅著・三上知治画(大正9年1月)神奈川 子安農園出版部 うきぐさ 藤川美鳥著(大正9年☆月)日本書院 *(横田順彌による) 大正11年(1922) 鼠(わがはい)の見た海軍 前編 匿名氏著(大正11年8月)三輪書店 大正12年(1923) 我輩は兵卒である 一兵卒著(大正12年1月)武揚堂書店 我輩は鼠である よぼ六著(大正12年4月)松陽堂 大正14年(1925) 我輩ハ犬デアル 山口好恵著(大正14年☆月)*(横田順彌による) 我輩は輸出貨物である(輸出振興叢書第一編) 小原健著(大正14年11月)神戸愛港新聞社 昭和3年(1928) 吾輩は共同水道である(英文世界名著全集第四巻ホーソーン短篇集) ホーソーン著・清水起正訳注 (昭和3年9月) 英文学社 昭和4年(1929) 私は瓦斯である(創立満十五週年記念事業懸賞文) 帝国瓦斯協会編(昭和4年1月)帝国瓦斯協会 昭和10年(1935) 吾輩は教卓である 冬目笑石著(昭和10年2月)朝日堂出版部 昭和14年(1939) 児童・吾輩は猫である 平林彪吉著(昭和14年5月)日本文学社 昭和17年(1942) 我輩は電気である 竹内時男・岡部操共著(昭和17年3月)畝傍書房 昭和25年(1950) 贋作吾輩は猫である 内田百M著(昭和25年4月)新潮社 昭和26年(1951) 吾輩は人間である ジョージ・R・スチュワート著 山路健訳(昭和26年1月増刷)明治書院 吾輩は水である 荒木駿馬著(昭和26年11月)恒星社厚生閣 昭和27年(1952) 我輩も猫である 高田保著(昭和27年4月)要書房 昭和28年(1953) わが輩は犬である 林房雄著(昭和28年5月)東方社 昭和39年(1964) わが輩は学生である―よく学びよく遊べ 草島時介著(昭和39年6月7版)オリオン社 昭和44年(1969) 高崎山太平記―わが輩はボスザルである 加藤柔郎著(昭和44年4月)翼書院 昭和46年(1971) 吾輩はらんちゅうである 付らんちゅう飼育法 大郷房次郎著(昭和46年11月)緑書房 昭和47年(1972) 我輩は俘虜であった 和田節雄著(昭和47年10月)京都 我輩は俘虜であった出版刊行会 昭和50年(1975) 吾輩はガイジンである―日本人の知恵の構造 フランク・ギブニー著 大前正臣訳(昭和50年7月)サイマル出版会 昭和52年(1977) 我輩はカモである ドナルド・E・ウェスレイク著 池央耿訳(昭和52年12月)角川書店 昭和53年(1978) 吾輩も猫である(『虎島』所収) 後藤明生著(昭和53年3月)実業之日本社 わが輩は犬のごときものである なだいなだ著(昭和53年4月)平凡社 昭和55年(1980) わが輩は雀である ヨハネ・マンテガッツア著(昭和55年12月)中央出版社 昭和57年(1982) 贋説吾輩は猫である 麻生義剛著(昭和57年10月)福岡 梓書院 吾輩は漱石である 井上ひさし著(昭和57年11月)集英社 吾輩は菊千代である 赤塚不二夫著(昭和57年〔月不記〕) 昭和58年(1983) 吾輩は猫ではない 江戸家猫八著(昭和58年2月)ポプラ社 兵隊ぐらしとピカドン―吾輩は猫ではない 2(昭和58年8月)ポプラ社 二足のわらじをはいた猫―吾輩は猫ではない 3(昭和59年2月)ポプラ社 吾輩は猫の友だちである 尾辻克彦著(昭和58年5月)中央公論社 昭和59年(1984) 吾輩は蚤である 江藤潔著(昭和59年10月)富士見書房(富士見ロマン文庫) 昭和60年(1985) わが輩は電子である―電子が語る物理現象 室岡義広著(昭和60年2月)講談社 昭和61年(1986) 我輩は猫である(百面百態ねこの写真集) 三浦Mieya写真・文(昭和61年12月)笠原出版社 昭和62年(1987) わが輩は盲導犬メアリーである 小林晃著(昭和62年6月)エフエー出版 吾輩は辰である 札幌市厚別図書館編(昭和62年12月)札幌市中央図書館 昭和63年(1988) 吾輩は巳である 札幌市厚別図書館編(昭和63年12月)札幌市中央図書館 平成1年(1989) 新編 吾輩は猫である(『宮本研戯曲集』第六巻) 宮本研著(平成1年8月)白水社 平成2年(1990) 吾輩は午である 札幌市厚別図書館編(平成2年1月)札幌市中央図書館 我輩は紙魚である(『ぶつぶつの時代』所収) 砂川恵永著(平成2年10月)早川書房 平成3年(1991) わが輩は酵素である―生命を支える超能力者たち 藤本大三郎著(平成3年2月)講談社 清水アキラはバカと呼ばれたい―我輩は反省だらけのパパである 清水アキラ著(平成3年6月)主婦と生活社 吾輩は猫である(桜樹ルイ写真集) 石原高撮影(平成3年6月)ビックマン 吾輩は猫である―収支明細表物語 (平成3年8月)保険毎日新聞社 平成4年(1992) 吾輩ハ苦手デアル 原田宗典著(平成4年1月)新潮社 我輩は神である 山本頑著(平成4年11月)兵庫 甲尚堂書店 平成5年(1993) 我が輩はバットである―私小説・プロ野球人門田の軌跡 門田博光著(平成5年2月)海越出版社 平成6年(1994) わが輩は料理長である―シェフの人間学 嶋村光夫著(平成6年3月)日本ヴォーグ社 わが輩はエイズウイルスである―何度言ってもわからない情けない人間たちにおくる慨嘆のメッセージ 近藤元治著(平成6年4月)HBJ出版局 わが輩はシッポである 井上こみち・シッポ先生と共に歩むネコの会著(平成6年4月)湘南動物出版 吾輩はフリープログラマー妻も子もあり猫もいる 菅昭美著 ワードクラフト(株)編(平成6年4月) 毎日コミュニケーションズ 我が輩は一銭五厘の兵隊さん 佐々木賢二著(平成6年5月)創栄出版 我輩はカモじゃない スチュアート・カミンスキー著(平成6年6月)文藝春秋(文春文庫) 吾輩はハスキーである―愛犬物語 三田誠広著(平成6年7月)河出書房新社 吾輩は霊である 夏目そうしき著(平成6年12月)橘出版 平成7年(1955) 吾輩は亀である―名前はもうある 冬目隆石著(平成7年2月)双葉社】 吾輩は屁である 仁藤祐治著(平成7年3月)近代文芸社 我が輩はニャンで或るか 香川捨丸著(平成7年6月)国分寺 新風社 わがはいはネコであるの法則 メンデンホール著 浅井慎平訳(平成7年8月)飛鳥新社】 平成8年(1996) 『吾輩は猫である』殺人事件 奥泉光著(平成8年1月)新潮社 吾輩は霊である 深見東州著(平成8年3月)たちばな出版(タチバナかっぽれ文庫) 吾輩ハ病メル地球デアル―地球が書いた本 前田愚老父著(平成8年4月)創栄出版 贋作「吾輩(僕)」は猫である 渡部正著(平成8年10月)国分寺 新風社 平成9年(1997) 吾輩は猫なのだ 赤塚不二夫著(平成9年1月)扶桑社】 我輩は施主である 赤瀬川原平著(平成9年8月)読売新聞社 中国怪食紀行―我が輩は「冒険する舌」である 小泉武夫著(平成9年9月)日本経済新聞社 吾輩ハ夏目家ノ猫デアル 飯島英一著(平成9年12月)創造社 平成10年(1998) 吾輩は猫である・伝 高橋康雄著(平成10年3月)北宋社 平成11年(1999) 吾輩も猫である(『四粒の清涼愛』所収) 宮川清光著(平成11年5月)文芸社 我が輩はエイリアン―米国中西部留学滞在記 さかもとせいさく著(平成11年10月)文芸社 吾輩はウイルスである 小野寺一清・井上行雄著(平成11年11月)青山社 平成12年(2000) 我輩は病気である 赤瀬川原平著(平成12年4月)マキノ出版 一人が三人―我輩は目黒考二・藤代三郎・北上次郎である 目黒考二著(平成12年7月)晶文社 吾輩は「黒帯」である―日本人拳士ロンドン道場痛快修業記 林信吾著(平成12年10月)小学館 吾輩も猫である ミッキー著 才園哲人訳(平成12年12月)東京図書出版会 平成13年(2001) エリザベス―現代版「吾輩は猫である」 山川とおる著(平成13年1月)東京図書出版会 吾輩は猫が好き 野坂昭如著(平成13年2月)中央公論新社(中公文庫) 吾輩はなめ猫である 井上ひさし著(平成13年8月)集英社(集英社文庫) わが輩はカネである 桃栗三太郎著(平成13年12月)文芸社 我輩は毒たまごである 府川昭男著(平成13年12月)叢文社 |