子どもと文学の歩みの全貌
明治・大正・昭和・平成の135年翻訳目録 児童文学翻訳作品総覧全8巻 企画 ナダ出版センター 編集 川戸道昭・榊原貴教 B5版 総ページ4000頁 寄稿論文27点・580頁(400字詰・1700枚) カラーグラビア104頁 定価 140,000円+税 刊行にあたって 近年の児童文学とその研究は目覚ましい。 国立国会図書館が平成十二年五月五日に国際子ども図書館を開館して、その流れに拍車がかけられた。 加えて、翻訳の研究も新しい動きを見せている。 翻訳文学研究の歴史を概観すると、その第一期は異文化との最初の出会いにおける衝撃研究に始まり、 つづいてその語学的な誤りを質した正確な翻訳研究が第二期に生まれ、 さらにコンテキストに密着した文化研究としての第三期があった。 こうした研究の蓄積を踏まえ、明治・大正・昭和・平成に至る翻訳を通して、 各時代が培ってきた文化の再創造とその精神形成の様態研究が要請される第四期に入りつつある。 このような環境にありながら、日本児童文学の基礎を築き、 明治大正昭和平成を通して創作童話のバック・グラウンドとなってきた 翻訳の総合的文献目録が用意されることがなかったことは不幸であった。 「ロビンソン・クルーソー」「ガリヴァー旅行記」「フランダースの犬」「宝島」 「不思議な国のアリス」「ジャングル・ブック」「ピーターパン」「ハイジ」「家なき子」 「にんじん」「グリム童話」「アンデルセン童話」「イワンの馬鹿」「ドン・キホーテ」「クオレ」 「青い鳥」「小公子」「ビノッキオ」「オズの魔法使い」「足ながおじさん」「赤毛のアン」「イソップ」 などの物語を今日も日本人のあらゆる世代に記憶されているのは、 明治以来たえず翻訳・再話・絵本化され、おびただしい出版が続けられてきた背景によるところが多い。 その足跡を一望できる正確な文献目録がないのは、画竜点睛を欠くに等しい。 『翻訳作品総覧*児童文学の135年』が多くの方の座右におかれ、 研究と検索に利用されることを願うものである。 本書から何がみえるか @ 500点の翻訳作品史がみえる 児童文学として紹介された作品500点余を選択し、 各作品のそれぞれを年表形式で目録化することによって、 原作に対する明治大正昭和平成135年の翻訳者の理解と、 読者である子供の感受性の歴史を読み取ることが可能となる。 A 新発掘された初出文献が一望にしてみえる 本書で初めて発表する文献は、作品の初出を更新し、児童文学史の書き換えを促す。 B 近代文学史さながらの翻訳者索引がみえる 明治から昭和に至る童話の翻訳は、 作家や文学研究家の模索時代もしくは不遇な時代の活躍舞台となっていた。 本書が作成する訳者索引は彼らの若き日の動静を浮かび上がらせる。 C 新しい児童文学研究の視点がみえる 翻訳童話の初の作品目録は、点と点をつなぐアイデア的研究から、歴史的な研究を切り拓き、 児童文学の研究に新展開を導入する。 D 翻訳児童文学の歴史が目でみえる 口絵に掲載する300点余の写真は、図書・雑誌の装丁史と美意識の歴史を一望できる。 E データ・ベースとして検索や古書探索の指針がみえる 図書館や蒐集家による古書収集の際の基本的なデータベースとなり、 収集活動をより効率的にするのみでなく、児童文学の参考図書として、 また児童文学専攻学生に対する指導の際に、指導教官が基本文献の探索の目安として活用できる。 F 翻訳児童文学の全体像を明らかにする初めての翻訳の総合目録 各巻収録内容一覧 第1巻 イギリス編 【目録編】 デフォー 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ロビンソン・クルーソーの生涯と冒険』 デフォー翻訳総合年表 スウィフト 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ガリヴァー旅行記』 スウィフト翻訳総合年表 ディケンズ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『オリヴァー・トゥイスト』『キリストの生涯』『クリスマス・キャロル』『骨董屋』 『ディヴィッド・コパーフィールド』『二都物語』『炉辺のこおろぎ』 ディケンズ翻訳総合年表 ヒューズ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『トム・ブラウンの学校生活』 ウィーダ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『フランダースの犬』『ニュルンベルクのストーヴ』『帰ってきたむく犬』 スティーヴンソン 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『宝島』『ジキル博士とハイド氏』『黒い矢』『さらわれたデーヴィド』 『若い人々のために』『子供の歌園』 スティーヴンソン翻訳総合年表 シュウエル 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『黒馬物語』 キャロル 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ふしぎの国のアリス』『鏡の国のアリス』『子供部屋のアリス』 キャロル翻訳総合年表 【論文編】 ディケンズの〈児童文学〉翻訳概観 松村昌家 明治の『アリス』―ナンセンス文学受容の原点 川戸道昭 『アリス』翻訳にみる子どもの視点の確立と少女像の創成―『ふしぎなお庭 まりちゃんの夢の国旅行』 千森幹子 第2巻(イギリス編) ワイルド 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『幸福の王子』『ナイチンゲールとばらの花』『わがままな大男』『忠実な友』 『すてきなロケット』『若い王』『王女の誕生日』『漁師とその魂』『星の子』 『散文詩』(芸術家、善をおこなう者、弟子、師、裁きの家、知恵を授ける者) ワイルド翻訳総合年表 キプリング 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ジャングル・ブック』『どうしてそうなの』『キム』 キプリング翻訳総合年表 バリー 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『小さな白い鳥』『ケンジントン公園のピーター・パン』『ピーターとウェンディ』 『ピーター・パン〈戯曲〉』 バリー翻訳総合年表 【索引編】(イギリス編) 訳者別翻訳索引 挿絵画家索引 出版社・新聞雑誌別索引 児童文学にみる翻訳社会史―あとがきに代えて 第3巻 フランス編 【目録編】 ペロー 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 新発掘された「新貞羅(シンデレラ)」〔明治十九年訳〕全文紹介 翻訳作品別目録 『青ひげ』『赤ずきんちゃん』『親指小僧』『愚かな願いごと』『グリゼリディス』 『サンドリヨンあるいは小さなガラスの上靴』『仙女たち』『長靴をはいた猫』『眠れる森の美女』 『まき毛のリケ』『ろばの皮』 ペロー翻訳総合年表 フェヌロン 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『寓話』『フェヌロンの冒険』『女子教育論』 フェヌロン翻訳総合年表 セギュール夫人 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『驢馬の思い出話』『哀れなブレーズ』『ソフィーのいたずら』 セギュール夫人翻訳総合年表 マロ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『家なき子』『家なき娘』 マロ翻訳総合年表 ドーデ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『月曜物語』所収「最後の授業」、「少年の裏切り」、「母親」、 「プチ・パテ(小さなまんじゅう)」、「書記」、「赤鷓鴣の戦き」、 『風車小屋だより』所収「居をかまえる」、「コルニーユ親方の秘密」、「スガンさんの牝山羊」、 「星」、「アルルの女」、「法王の驢馬」、「老夫婦」「王太子の死」「野原の郡長」「金の脳みそを持った男」、 『タラスコンのタルタランのいとも奇妙な数々の冒険物語』、『プチ・ショーズ(ちび)』 ドーデ翻訳総合年表 ルナール 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『にんじん』『博物誌』『葡萄畑の葡萄作り』 ルナール翻訳総合年表 ヴェルヌ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『十五少年漂流記(二年間の休暇)』『八十日間世界一周』『海底二万里』 『気球に乗って五週間』『グラント船長の子供たち』『神秘の島』『地球から月へ』『地底旅行』 『ミシェル・ストロゴフ』 ヴェルヌ翻訳総合年表 【収録論文】 明治の「シンデレラ」と「赤ずきん」―日本に西洋童話が根づくまで 川戸道昭 「風の又三郎」―〈ガラスの靴幻想〉―「サンドリヨン」 私市保彦 セギュール夫人の作品の邦訳略史 私市保彦 グリムのメルヒェンと伝説における魔女たち 奈倉洋子 第4巻 ドイツ編 【目録編】 ビュルガー 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ほらふき男爵』 グリム 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『グリム童話』全作品 グリム翻訳総合年表 ハウフ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『隊商』『アレッサンドリア物語』『シュペッサルトの森の宿屋』 ハウフ翻訳総合年表 シュピーリ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ハイジ』 シュピーリ翻訳総合年表 【索引編】(「フランス編」「ドイツ編」の統合索引) 訳者別翻訳索引 挿絵画家索引 出版社・新聞雑誌別索引 【収録論文】 英訳本から重訳された日本のグリム童話―最初の邦訳本を中心に 野口芳子 グリム十四話―明治教育の原点 中山淳子 第5巻 北欧・南欧編 【目録編】 アンデルセン 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『アンデルセン童話』全作品、『絵のない絵本』、『即興詩人』 アンデルセン翻訳総合年表 デ・アミーチス 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『クオーレ』 メーテルリンク 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『青い鳥』 メーテルリンク翻訳総合年表 ラーゲルレーヴ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ニルスの不思議な旅』『ムネアカドリ』 ラーゲルレーヴ翻訳総合年表 コッローディ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ピノッキオ』 【収録論文】 馬に乗った裸の王様―アンデルセンの翻訳に与えた『ナショナル・リーダー』の影響 川戸道昭 “Tommelise”を越えた「親指姫」―Tommelise受容の変遷 北川公美子 第6巻 スペイン・ロシア編 【目録編】 セルバンテス 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ドン・キホーテ』 セルバンテス翻訳総合年表 クルイローフ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『寓話詩集』 エルショーフ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『せむしのこうま』 トルストイ 略歴 翻訳作品別目録 『愛あるところには神がある』『イワンの馬鹿』『コーカサスのとりこ』 『作男エメリアンとから太鼓』『小さい悪魔がパンきれのつぐないをした話』『鶏の卵ほどの穀粒』 『人にはどれだけの土地がいるか』『人はなんで生きるか』 トルストイ翻訳総合年表 ソログープ 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『いい香のする名前』『かくれんぼ』『影絵』『はね』 ソログープ翻訳総合年表 【収録論文】 なぜ今、セルバンテスなのか 本田誠二 セルバンテスの人と作品 本田誠二 日本におけるセルバンテス研究 本田誠二 明治期における『模範小説集』の翻訳 斎藤文子 セルバンテス作品邦訳小史―『ドン・キホーテ』を中心に 世路蛮太郎 『ドン・キホーテ』翻訳の比較研究 樋口正義 邦訳に見るセルバンテス観および『ドン・キホーテ』観の諸相 世路蛮太郎 『ドン・キホーテ』の挿絵 古家久世 セルバンテス研究年表 坂東省次 * 『ロシア児童文学の世界―昔話から現代の作品まで』展をめぐって 松谷さやか 「せむしのこうま」の誕生とあゆんだ道 田中かな子 明治の児童向け出版におけるトルストイ受容 丸尾美保 第7巻 アメリカ・その他編 【目録編】 ホーソーン 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『泉の幻影』『人面の大岩』『ディヴッド・スワン』『ワンダー・ブック』『緋文字』 ホーソーン翻訳総合年表 ポー 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『黒猫』『黄金虫』『モルグ街の殺人事件』 ポー翻訳総合年表 ストウ夫人 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『アンクル・トムの小屋』 オルコット 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『若草物語』『良妻物語』『少年たち』『ジョーの子どもたち』『昔気質の少女』 『八人のいとこたち』『花ざかりのローズ』『ライラックの花の下で』『ジャックとジル』 オルコット翻訳総合年表 マーク・トウェイン 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『王子と乞食』『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』 マーク・トウェイン翻訳総合年表 バーネット 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『小公子』『小公女』『秘密の花園』 バーネット翻訳総合年表 ウェブスター 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『あしながおじさん』『続あしながおじさん』 ウェブスター翻訳総合年表 【収録論文】 明治のマザーグース―英語リーダーを仲立ちとするその受容の全容 川戸道昭 日本の「黒猫」における一人称代名詞の変遷について―Edgar Allan Poe原作“The Black Cat” 山本いずみ 子供の〈声〉の翻訳をめぐって―ハックルベリイ・フィンそしてクェンティン 井上健 アニメの中のフランダースの犬 井上英明 第8巻 千一夜物語・イソップ寓話編 【目録編】 アラビアン・ナイト 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『アリババと四十人の盗賊』『アラジンと魔法のランプ』『シンドバッドの航海』 『空飛ぶ木馬』 アラビアン・ナイト翻訳総合年表 イソップ寓話 略歴/翻訳書の序文・解説等による紹介 翻訳作品別目録 『ありときりぎりす』『犬の影』『兎と亀』『牛と蛙』『樫と葦』『狐と葡萄』 『北風と太陽』『町の鼠と田舎の鼠』『羊飼いと狼』 イソップ寓話翻訳総合年表 【索引編】(5巻〜8巻の統合索引) 訳者別翻訳索引 挿絵画家索引 |